ピアノが鳴る
- kakiage
- 2020年8月25日
- 読了時間: 3分
私が小さい頃まだ実家は防音のない部屋にディアパソンの白いグランドピアノがあった。このピアノが鳴るのである。勝手に一人で。隣の部屋が茶の間だったので家族で夕ご飯を食べている時「ポーン、ポーン、ポーン」およそ2、3回叩く音がする。あれ?というのは家族全員が聞いている。ピアノの高いドの音だねえ、と。まあ何かの現象かなと気にせずいたわけだが、問題はそのピアノを買い替え、防音部屋にしてさらに大きなベーゼンドルファーのフルコンというアホなピアノを母が爆買いした後に起こった。およそ間取りは一緒でその防音部屋の隣で食事をしているとやはり「ポーン、ポーン。。。」と、同じ高いドが鳴るのだ。たまに換気しているドアを開けているときにしか聞こえないということはやはりピアノが鳴っているのだ。うーん、、これはヤバいぞ。なんかあるぞ、と。しかし何かは確かめようもなく同じ高いドの音をたまに聞きながら過ごした。
そして、その実家からも離れそんなことはすっかり忘れていた。そして3年前母が亡くなるときそのベーゼンを放置するのもなんなのでとりあえず東京の自分の家に運んだ。
どっちにしろ私はピアノを弾かない。受験終わったとたんにピアノはほとんど弾かなくなった。弾いているのはまさかの息子だ。クソガキレベルが弾くようなピアノではないので悩んだがしょうがない、有効利用だ。
そして問題が勃発した。
息子がかなり速いパッセージを練習しているのを隣の部屋で「ケっ」と思いながら聞いていたら「ポーン、ポーン、、、ポーン」あの高いドの音が同時に鳴っているのだ!
同時には弾けない。
この音はあれだ、あの音だ。忘れもしない私が小さい頃から聞いてきたあの高いドの音なのである。そしてその音が鳴ることはもちろん息子は知らない。
練習終わって何気に聞いてみた。
「練習中違う音がなってたよ」
「そうだよ、高いドの音が勝手になって困ったよ」
初めて血の気が引いた。
これはいったいどういうことだ?
ピアノにまつわるナンチャラではなく、場所でもなく、なんなんだ?
そして私ではなく息子が受け継いだということか?
わからない、なんのため、鳴るのか?
こういうのを超常現象というのか?
害もなくご利益もないのでどうでもいいのだが気になってしょうがない。
薄気味悪いので部屋の4隅に塩を盛ってみた。
が、猫に荒らされ部屋中塩まみれになったのでもうしない。
共存していくしかないんだろうな、と。
いやしかし、懐かしくもあった高いドの音だった。
いろいろな思い出とともに深く記憶に残る音だ。
今度鳴るときは「おひさしぶり」な感じで聞けそうとはいえ、、
やはり、なぜなのか、知りたい。ぞ、と。


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